国家公務員と地方公務員のどちらが高収入かは、平均年収だけでは決められません。
同じ一般的な事務職でも、給与表、勤務地、地域手当、職歴加算、役職、時間外勤務、転勤範囲が違うためです。地方公務員は自治体による差もあります。
公的データの平均値は全体の傾向を知る材料にはなりますが、転職後の自分の年収を示す数字ではありません。転職先を選ぶときは、国家か地方かという区分よりも、応募する職種と勤務先の条件を比べることが重要です。
国家公務員と地方公務員は平均年収だけで選べない
結論を先に整理すると、国家公務員と地方公務員の収入には、すべての職員に共通する一律の差はありません。
- 国家公務員でも、本府省と地方機関では勤務地や手当が異なる
- 地方公務員でも、都道府県、政令指定都市、市区町村で給与水準が異なる
- 行政職、税務職、公安職、医療職、教育職などで適用される給与表が異なる
- 同じ基本給でも、地域手当、住居手当、扶養手当、時間外勤務手当などで年収が変わる
そのため、「国家公務員の平均」と「地方公務員の平均」を見て高い方を選ぶのではなく、自分が応募できる採用区分と職種に絞って比較します。
同じ時点・近い職種の給与データを比較
比較条件をできるだけ近づけるため、ここでは2025年4月1日時点の国家公務員「行政職俸給表(一)」と、地方公務員「一般行政職」を見ます。いずれも一般的な行政事務に従事する職員を中心とした区分です。
2025年4月1日時点の比較表
| 比較項目 | 国家公務員 行政職俸給表(一) | 地方公務員 一般行政職 |
|---|---|---|
| 平均年齢 | 41.9歳 | 42.0歳 |
| 平均俸給・給料月額 | 332,237円 | 326,911円 |
| 平均給与月額 | 414,480円 | 413,968円 |
| 平均給与月額(国比較ベース) | 414,480円 | 372,336円 |
出典:人事院「令和7年国家公務員給与等実態調査」、総務省「令和7年地方公務員給与実態調査結果等の概要」。いずれも2025年4月1日時点。
通常の「平均給与月額」だけを見ると差は512円です。しかし、この512円を国家公務員と地方公務員の実質的な給与差と考えることはできません。
地方公務員の平均給与月額には時間外勤務手当などが含まれる一方、国家公務員の表の平均給与月額には時間外勤務手当が含まれていません。そこで地方公務員側には、国家公務員と同じ方法で算出した「国比較ベース」も公表されています。
国比較ベースでは地方公務員が国家公務員より月額42,144円低くなります。ただし、これも在職者全体の平均です。職員の年齢、学歴、経験年数、役職、勤務地の構成が異なるため、応募者個人の年収差には置き換えられません。
最新の国家公務員データは2026年、地方は2025年
2026年9月12日時点で、人事院は2026年4月1日時点の国家公務員給与データを公表しています。行政職俸給表(一)の平均年齢は41.7歳、平均俸給月額は342,178円、平均給与月額は428,451円です。
一方、同じ2026年4月1日時点の全国地方公務員データは確認できないため、この記事の比較表には混ぜていません。年度の違う最新値を並べると、給与改定の時期による差まで「国家と地方の差」に見えてしまうからです。
平均給与の差がそのまま転職後の年収差にならない理由
平均年齢が近くても職員構成は同じではない
平均年齢がほぼ同じでも、学歴、経験年数、役職、職務の級の構成までは同じではありません。管理職の割合や長期勤続者の割合が違えば、平均給与も変わります。
基本給の水準をより公平に比べる指標としてラスパイレス指数がありますが、これも手当やボーナスを含む個人の年収を表す数字ではありません。
勤務地と地域手当で額面が変わる
国家公務員の地域手当は勤務する地域によって異なります。地方公務員も、自治体の条例に基づいて地域手当の有無や支給割合が決まります。
地域手当が高い勤務地では額面給与が増えやすい一方、家賃や物価も高い可能性があります。生活設計では、地域手当の額だけでなく、住居手当を差し引いた実質的な家賃負担や通勤費も確認しましょう。
職種によって使う給与表が違う
公務員には行政職以外にも、税務、公安、教育、医療、福祉、研究などの職種があります。職種が違えば給与表や手当も変わるため、行政職の平均を警察官、消防士、教員、看護師などの見込み年収として使うことはできません。
まず募集要項で採用後の職種を確認し、その職種に適用される給与表を調べる必要があります。
ボーナスを含む年収は月額だけでは決まらない
年収は、おおむね「毎月の給料と手当の12か月分+期末・勤勉手当+時間外勤務手当など」で構成されます。
採用初年度の期末・勤勉手当は、基準日における在職期間などで満額にならないことがあります。平均給与月額を単純に12倍しただけでは、転職初年度の年収は分かりません。
国家公務員と地方公務員の給与制度を比較
| 比較項目 | 国家公務員 | 地方公務員 |
|---|---|---|
| 給与の根拠 | 給与法、俸給表、人事院規則など | 各自治体の給与条例、給料表、規則など |
| 給与水準の見直し | 人事院勧告を踏まえ、法律改正を経て反映 | 人事委員会勧告や国・他団体との均衡などを踏まえ、条例改正を経て反映 |
| 基本給 | 職種別の俸給表、職務の級、号俸で決定 | 自治体・職種別の給料表、職務の級、号給で決定 |
| 主な手当 | 地域、住居、扶養、通勤、超過勤務、単身赴任など | 名称は似ていても、支給条件や金額は自治体ごとに異なる |
| 中途採用時の給与 | 採用後の職務と経歴などを考慮して決定 | 自治体の初任給基準と職歴換算の規定により決定 |
| 確認先 | 募集要項、採用府省、人事院資料、俸給表 | 募集要項、給与条例、初任給規則、給与公表資料 |
地方公務員の給与は国に近い仕組みを採用する自治体が多いものの、国と自動的に同じになるわけではありません。国の給与改定と自治体の条例改正では、内容や反映時期が異なる場合があります。
勤務地と転勤範囲は生活コストにも影響する
国家公務員は全国転勤、地方公務員は転勤なし、と一律には言えません。
- 国家公務員:本府省、地方支分部局などで異動範囲が異なる。採用地域内が中心の職種でも、管轄内の異動や本省勤務の可能性を確認する
- 都道府県職員:県内全域や出先機関への異動があり、転居を伴う場合がある
- 市区町村職員:原則として自治体内の異動が中心だが、支所、出先機関、他団体への派遣などがある
転勤があれば、引っ越し、二重生活、配偶者の仕事、子どもの転校なども家計に影響します。単身赴任手当や住居手当があっても、実際の負担をすべて補えるとは限りません。
額面年収が高い勤務先でも、転居費や家賃が増えれば可処分所得は下がることがあります。収入と勤務地はセットで比べましょう。
30代の転職者が採用前に確認する8項目
30代の転職では、平均給与より初任給の決まり方が重要です。応募先ごとに、次の項目を確認してください。
- 採用区分と職種:経験者採用か一般の試験区分か、採用後にどの給与表が適用されるか
- 初任給例の前提:年齢、学歴、民間勤務年数、役職経験など、自分と条件が近いか
- 職歴加算:前職の年数が何年分、どの割合で給与決定に反映されるか
- 勤務地と地域手当:初任地だけでなく、想定される異動先で支給割合がどう変わるか
- 対象になる手当:住居、扶養、通勤、単身赴任などの支給条件を満たすか
- 期末・勤勉手当:年間の支給月数だけでなく、採用初年度の在職期間による調整があるか
- 時間外勤務:部署による差が大きいため、平均年収に含まれる残業代を固定収入と考えない
- 転勤範囲:転居の可能性、頻度、単身赴任の可能性を家計と一緒に確認する
職歴加算は「民間で10年働いたから、公務員の10年目と同じ給料になる」という意味ではありません。職務との関連性や勤務形態などを含め、採用先の規定に基づいて決まります。募集要項のモデル給与だけで判断できない場合は、採用担当へ前提条件を確認しましょう。
国家公務員と地方公務員のどちらを見るべき?
| 重視する条件 | 先に確認したい選択肢 |
|---|---|
| 国全体の制度や複数地域に関わる仕事をしたい | 国家公務員 |
| 省庁・機関に固有の専門分野を生かしたい | 国家公務員の該当職種 |
| 特定の地域で住民に近い仕事をしたい | 都道府県・市区町村 |
| 生活拠点を一定の地域に置きたい | 地方公務員を中心に、実際の異動範囲を確認 |
| 転職直後の収入減を抑えたい | 国家・地方を分けず、初任給例と職歴加算を個別比較 |
| 可処分所得を重視したい | 地域手当、家賃、住居手当、転勤費用まで含めて比較 |
国家公務員向きか地方公務員向きかは、年収の平均値より、仕事の範囲と暮らしたい地域で絞る方が判断しやすくなります。そのうえで、候補となる府省・自治体の給与条件を比較してください。
まとめ:平均年収より自分の採用条件で比べる
国家公務員と地方公務員の年収差は、平均値だけでは判断できません。公表されている平均給与月額は、対象職員や含まれる手当の範囲をそろえなければ比較を誤ります。
- 同じ調査時点、近い職種、同じ給与項目で比べる
- 地方公務員は、志望する自治体の条例と給与公表資料を見る
- 地域手当だけでなく、家賃や転勤に伴う生活コストも考える
- 30代の転職では、平均給与より初任給と職歴加算を確認する
次は、年齢や前職の経験が初任給にどう反映されるかを確認しましょう。

